ある巡回説教者の話(その1)

 「救われて、そのことを知っているのは素晴らしい」と言う人。「救われて、そのことを示すのはもっと素晴らしい」と言う人。そのどちらも大切です。自分が救われたことを知る必要がありますが、その際には、言葉だけでなく行動においても信仰を現していく必要があります。

 ピリー・サンディのように華やかなクリスチャン巡回説教者は恐らく他にはいないでしどう。中米出身で十代、二十代の頃は野球選手をしていた彼の行くところは、どこでも大群衆が集いました。人々を主に向けさせるための、彼の伝統にこだわらないやり方にまつわる話は今日までも多くあります。そのうちの一つとして、ペンシルべニア州のある銀行の副頭取に関するものがあります。

 ワレス・バイアードは、ビリー・サンディがクルセードのために町に来た当時、銀行の窓口主任でした。ピリー・サンディの話を聞こうと大勢の人たちが集まりましたが、彼は行きませんでした。宗教には関わりたくないし、あの巡回説教者の話などまっぴらだ、と思っていました。しかし偶然にもビリー・サンディがその地で口座を開設する手続きをしたのは、彼が勤めている銀行でした。

 来る日も来る日も、ビリー・サンディの口座の残高が増えていくのをバイアードは注意深く見ていました。残高が増えていくにつれて、この説教者に対する憎悪の念も深まっていきました。クルセードが終了した次の日、ビリー・サンディは自分の用件を済ますために銀行にやって来ました。献金の小切手類の中に五ドルと書かれた小切手を見付けたバイアードは、自分の不満を晴らす絶好の機会だ、と思いました。

 「当行ではこの小切手はお引き受けできません」とバイアード。「どうしてですか?」「この小切手を書いた婦人は、残高が五ドルもありません。ご主人を亡くして、とても貧しい暮らしをしているんです」

 サンディは小切手を見て、考え深げに眉を寄せました。それを見たバイアードは、もっとくさびを打ち込んでやろう、と考えました。 「実のところ、当行では彼女の家を抵当に千五百ドル貸しています。近々、その家を抵当流れで処分するつもりです」 これできっとこの金の亡者の痛いところを突いたはずだ、とパイアードは思いました。

 それを聞いたサンディは未亡人の小切手を破りました。そしてバイアードの前に一枚の紙切れを置いて、言いました、「これなら引き受けてくれるだろうか」バイアードが見ると、それは千五百ドルの小切手でした。「その未亡人の抵当返済のために」とサンディが言いました。 ・・・続く

ペンテコステ・ヘラルド、【今日のダイヤモンド】ジョイ・ヘイニー姉妹著より抜粋)

by カレブ